欲望の翼
1990年
香港
原題は「阿飛正傳」。
1960年代初頭の香港を舞台に、男女5人が織りなす群像愛情片。
ウォン・カーウァイ監督作品。
公開当時は興行的に振るわなかったが、その芸術性の高さが評価される。
同監督の名が世に広く知れ渡る代表作品となった。
香港電影金像奨(香港アカデミー)で最優秀作品賞・監督賞・撮影賞・美術賞を受賞。
また主演のレスリー・チャンが最優秀主演男優賞を受賞する。
ウォン・カーウァイは個性的な作風で知られる映画監督。
独特な台詞の言い回しや、時間をかけゆったりとした雰囲気。
スローモーションや手持ちカメラを用いた撮影の躍動感あふれる映像など、芸術的な作品を世に送り出した。
また撮影にあたっては台本がないことも有名。
演者たちはストーリーの全貌が分からないまま、監督から当日に渡された台詞のメモに沿って演じていた。
多くの俳優が何度も撮り直しをしていたことでも知られる。
そのような撮影方法の為、映画は非情に長い時間をかけて制作されるのが常だった。
2004年の「2046」は5年、2013年「グランドマスター」は10年かけて制作されていたとされる。
あらすじ
1960年代初頭の香港。
ハンサムで自由奔放なヨディは、スタジアムのチケット売り場で働くスーを口説く。
最初は相手にしなかったスーだが、毎日のようにやって来るヨディにやがて惹かれてゆく。
いつしか二人は同棲を始めるが、やがて冷淡なヨディは束縛を嫌いスーと別れてしまう・・・
ネタバレ!
ウォン・カーウァイ監督作品をストーリーで追っても仕方がない。
お話うんぬんより、それぞれの役者を観る映画のような気もします。
とにかく出演者の演技っぷりが見事。
普段あまり観ないような表情や間がなかなか興味を惹かれる。
90年というと丁度レスリーが一度歌手を引退し、役者として復帰した年。
それまでは1986年「男たちの挽歌」や1987年「チャイニーズ・ゴーストストーリー」などに出演してた人気スターという感じだったけど、本作で役者としてさらに躍進したと感じる演技っぷりだ。
マギー・チャンって、やっぱり役者やなぁ、と改めて思う。
カリーナ・ラウはいつも捨てられる女の役やね。
ジャッキー・チュンはあまり目立たない役どころだけど、最後の台詞「俺のところにこい!」の時の間と動きは絶妙だ。
アンディ・ラウは今回また地味で静かな役柄だけど、それがまたいい味。
最後の最後でトニー・レオンが登場。
トニーの出番はストーリには関係なく意味不明。
でも台詞がまったく無いのに観入ってしまうのは流石です。
本作はもともと2部構成で、トニーの登場は続編への布石だったらしい。
結局は予算や時間の都合で制作はされずじまい。
続編の構想は後年、2000年「花様年華」や2004年「2046」に繋がります。
前述のとおり、ウォン・カーウァイ監督作品は何度も撮り直しをすることで知られる。
レスリー・チャンとマギー・チャンのラブシーンは47テイクにおよんだという。
またレスリー・チャンは爪楊枝で14回遊び、ジャッキー・チュンはパスタを20皿食べ、カリーナ・ラウは98本の煙草を吸ったという逸話が伝わる。
トニー・レオンは何度も撮り直しされることに自身をなくし、自宅で泣いた。
のちに表情にばかり気を取られ、身振り手振りを疎かにしていたことに気づいたという。
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