インファナル・アフェア
2002年12月12日
香港
原題は「無間道」。
意味は無間地獄。
マフィアに潜入した捜査官と、警察に潜入したマフィア。
2人のスパイがお互いの正体を探る心理戦と、そして対決を描く犯罪片。
2000年代を代表する香港ノワールの傑作。
この作品以降、香港犯罪映画の完成度が洗練されたとも言える節目となった作品。
香港電影金像奨(香港アカデミー)で作品賞と監督賞、トニー・レオンが主演男優賞とアンソニー・ウォンが助演男優賞を受賞した。
2000年代に入って香港映画は低迷したとも言われ、特に犯罪ジャンルの映画は不調だった。
ハリウッド映画や韓国映画に太刀打ちできるような犯罪映画はなく、当時の香港映画はコメディやラブロマンスが主流となっていた。
そんな中で制作された本作は、アンディ・ラウとトニーレオンという2大スターを起用する。
そんな映画がもし失敗すれば、潜入捜査モノの犯罪映画はもう二度と作られないのではないかと懸念される状況だった。
本作ではこれまでの香港映画の制作では珍しく、出演者による台本の読み合わせが行われている。
また監督や一部の制作スタッフがインスピレーションで撮影を進めることなく、密に練られた脚本と絵コンテが用意され出演者も交えた意見交換が徹底された。
これまでの“早く作る”という香港映画の慣習を捨て、完璧な作品を造り上げるための全力姿勢が映画の完成度を高めた起死回生の1本だった。
あらすじ
マフィアの一員である20歳の若き青年ラウは、警察学校に入学する。
彼の目的は警察に潜入し、マフィアのスパイとなることだった。
一方で同じ警察学校にいた25歳の青年ヤンは、素行不良で退学となる。
がその実は、マフィアに潜入する為の秘密捜査であった。
そして10年後。
今や警部となったラウ。
マフィアの親分サムに情報を流しつつ、かたや対立組織の情報を得て功績を挙げ昇進を続けていた。
一方でマフィアに潜入したヤンは、今は親分サムの組織に属し幹部の1人なっていた。
しかし彼の本当の身分を知る人間は、上司であるウォン警視だけだった・・・
ネタバレ!
マフィアに潜入したヤン捜査官の情報を元に、麻薬取引現場を押さえようとした警察。
しかしこの計画は警察に潜入しているラウ警部によって知られるところとなり、あと一歩のところで取引は中止されマフィアの親分サムを取り逃がす。
この1件で、警察とマフィアの双方が、お互いにスパイが潜入していることを確信した。
マフィアの親分サムは、組織に潜入しているスパイを見つけ出すようヤンに命じる。
同様に警察に潜入しているラウ警部は、警察内にいるスパイを見つけるよう内部調査局に任命された。
2人のスパイは自分の正体を隠しつつ、相手の正体を暴こうと探り合う。
マフィアに潜入するヤンの正体を知る者はウォン警視ただ1人。
このウォン警視が密かに会っている人物こそが、潜入捜査官だとラウ警部は睨んだ。
ラウはその情報を流し、マフィアは組織を総動員して2人を追い詰める。
ヤンはなんとか正体がバレないまま脱出に成功するが、ウォン警視は捕まり殺された。
ウォン警視を失ったヤンは復讐に燃え、組織の新たな取引情報を警察へ伝える。
その情報を受け取ったのはラウ警部だった。
しかしラウ警部はその取引現場にて、親分のサムを密かに暗殺する。
彼はマフィアから足を洗い、本当の刑事になろうと考えた。
サムの組織が壊滅したことで、ヤンの潜入捜査の任務は終わった。
彼は元の身分を取り戻そうと警察署へ戻り、そこで初めてラウ警部と顔を合わす。
だがこの時、ラウの正体が警察に潜入していたマフィアだということを知った。
こうして2人は最後の対決を迎える。
最後に生き残ったのはラウ警部。
ヤンが報われないまま終わる哀しい結末となる。
ラウは警官として生き続けることになるが、決して抜け出せない苦しみの無間地獄が続くことになる。
映画は大ヒットを受け、翌年にすぐ続編2003年「インファナル・アフェア 無間序曲」が公開されている。
内容は若きラウとヤンが潜入を始めた頃の前日談で、お話の主役はウォン警部とサム親分の2人。
そして同年2003年に「インファナル・アフェアIII 終極無間」が公開された。
こちらは警官となったラウの正体がついに暴かれる、本作の後日談となっている。
死んだヤンも過去回想の新たなシーンで登場し、より感慨深いお話となっている。
どちらもお観逃しなく。
また本作はハリウッドでリメイクされ、2006年「ディパーテッド」として公開されている。
主役2人がレオナルド・ディカプリオとマット・デイモンというこちらも豪華なキャストで、アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞、編集賞を受賞した。
▼インファナル・アフェアの小ネタ
・脚本家のアラン・マックは1997年「フェイス/オフ」や1998年「ヒーロー・ネバー・ダイ」などの作品を観て、2人のヒーローが対決する話を思いついた。
そして自身の父親が警察官だったこと。
その父親がマフィアに挨拶をしていたこと。
そのマフィアが実は潜入捜査官だったということを後に知らされたという、自身の幼少時の体験を元に脚本を書き始める。
そこに監督のアンドリュー・ラウのアイデアが加わり、警察に潜入するマフィアとの2重ストーリーが出来上がった。
・出演者たちが初めて読み合わせをする時、マフィアの親分サムを演じるエリック・ツァンはウォン警視を演じるアンソニー・ウォンにどのように演じるかを尋ねた。
しかしアンソニー・ウォンはわざと「私がする事はあなたに関係ない!」と突っぱねた。
現場には緊張感が走ったが、2人の登場人物の対立がより緊迫したものになったという。
・マフィアに潜入している捜査官のヤンとウォン警視がビルの屋上で話す最初のシーンでは、当初は本編開始時と同じ10年後の設定だった。
しかしトニー・レオンが3年後に変更することを提案した。
そのほうがヤンのその後の運命や葛藤がより強く伝わると考えれらえ、その後に関連する脚本のセリフはすべて書き直された。
・序盤でマフィアの親分サムが逮捕されるも証拠不十分で釈放される警察署のシーンでは、親分サムを演じるエリック・ツァンがテーブルの上の食事を払い落とし、暴言を吐いて立ち去る。
監督は少し大げさ過ぎると思い、別のシーンを検討した。
しかしエリック・ツァンはそのまま演じることを求め、さらにテーブルに用意する食事の量を増やさせた。
なおこのシーンの撮影時、空腹だったアンディ・ラウはこっそりテーブルの食事をつまみ食いした。
しかしテーブルの上の食事は、一度地面に落ちたものを拾った使いまわしの物だとスタッフから聞き、ショックを受けた。
・ウォン警視の上司にあたる警視長は、当初はラウの恋人の父親という設定があった。
ラウ警部の昇進も警視長の後押しがあったということになっていたが、最終的にこの設定は無くなった。
警視長とゴルフをしながら、ラウに結婚式の準備を尋ねるシーンの会話はその名残である。
・ウォン警視がビルから落下するシーンでは、その前に屋上でマフィアに拷問されるというシーンが予定されていた。
しかし監督はそのシーンを撮影せず、いきなりビルから落下するというドラマチックな展開となった。
・当初の脚本にはラウ警部とヤンがエレベーター内で格闘するアクションシーンがあった。
スタントマンも用意されていがが、トニー・レオンは「格闘は必要ない」と提案した。
最終的にはエレベーターが開いた瞬間にヤンが眉間を撃たれ、遺体がエレベーターのドアに挟まれるという悲壮感漂う結末に変更された。
これらのように従来の香港映画では当たり前のようにあった暴力シーンや銃撃戦が、本作では極限まで排除されている。
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